キャラメルボイスのタイムトラベラー

僕は貴方の事解らないし、知らないけど

しげおかくんをすきになれない



タイトルだけ見たらアレなんですけど、きらいとか生理的に無理とかそういう意味ではないです、一応念のため。




もう二年も前に私はこんなブログを書きました。


しげおかくんをすきになりたい - キャラメルボイスのタイムトラベラー http://eightxjohnnist.hatenablog.com/entry/2016/02/23/185331




それから今までずっと、
しげおかくんの
「この表情がすき」とか
「このパーツがすき」とか
「この動きがすき」
とは言ってきましたが、しげおかくん自体についてすきだとは口にしてきませんでした。


自分のログ見てもそうでした。




しかし、あまりにもすきだということに抵抗がありすぎるため、前回ブログに書いたことでそれが己への呪詛になって、勝手に縛り付けているんだとも思うようになりました。


ハリーポッターの「名前を呼んではいけないあの人」みたいな。




それに加え、最近もうひとり応援したい人ができて、想いの形が違うこともあるけれど、その人にはまだ軽率に好きだと言えることに対して「ふたりともすきだと言えたら楽なのに」とふと思ったこともありました。




でも一昨日名古屋のレポを見て、あぁやっぱり私は彼のことをまだすきだといえない、と思いました。

しげおかくんが
「あ~人生イージーモードやなぁ」
って言ったと聞いて。


だってイージーモードな訳ないじゃない。


きっと、多分、確実に、私なんかよりずっとハードモードな経験を山のようにして生きてきてるはず。


なのに、あんなに簡単にイージーモードだって言ってのける。


ネットスラングのひとつとして言っただけかもしれないけれど、そう思えることができながらアイドルとして過ごしてくれていることが嬉しくて、妬ましくて、苦しかった。


どれだけしんどいことがあっても、苦しい日々を過ごしても、嫌な経験をしても、結果良いことがあればオーケーやん!みたいに言われている気がして、どうしようもなくなった。


ずっと辛い辛いと思って生きるよりそういう風に考える方がいいことは十分理解しています、頭では。


でも理屈は分かっていても、実際にそう生きることは、そう言い切れることは、本当に難しい。


私が割とポジティブに生きているつもりだから尚更そう感じました。


ポジティブ気味な人間の私でも、
「私の人生はイージーモードだと皆の前で笑顔で言い放つことができるか」
と自分に問いたら、最終的にどうにかなったことでも、しんどかった事実が頭を巡って、即座に
「ああイージーモードだ」
と返すことはできなくて。
結果
「平均的に言えばイージーな方に部類されるのかもしれない」
というなんとも歯切れの悪い回答になりました。




皆が頭で分かっていてもできないことを、彼はどんどんやってのける。
たった三つしか年の離れていない、兵庫の男の子が。


青春をすべてを不確実な世界に捧げて、
不言実行を貫いて、
舞台の端っこから関西Jr.のゼロ番にのし上がって、
不条理な事実に誰よりも止まらず突き進んで、
京セラドームのステージから10年前の自分に手を振った彼。




嗚呼、どんなに強いのか。




私は彼が数え切れないほどにアイドルを生業とした人生というものを繰り返してきたのだと思うことが何度もあります。


何度もその世界を生きて、粋も甘いも苦いも数え切れないほどに経験して、山ほど失敗して、試行錯誤して、どうにか思い描く世界に少しずつ近づけていこうと記憶を残して転生を繰り返しているような、そんなお伽話のような人生。


それくらい経験していないとそんな風に居ることはできるはずがないと思うほどに、25歳の彼から生まれるものはすべてが強い。


彼はきっと、今までの人生は決してずっとイージーモードではなかったことを知っている。


でも彼自信の口から出る「イージーモードやなぁ」に匹敵する魔法の言葉はきっと無い。


本当はイージーじゃなかったとしても、彼が片えくぼを見せて白い歯を見せながらそう言ってしまえば、世界はそう変わっていく。大きすぎる力。




彼は私にとって天から注ぐ太陽の光のように、遠く、眩しく、あたたかく、熱く、エネルギーに満ち満ちていすぎる。


だから、毎度日が昇る度に、椅子の上に立ってみて、家の一番高いところにのぼってみて、坂道を駆け上がってみて、手を伸ばしては、「やっぱり今日も届かない」と嘆息する。


でも、彼が私の中で太陽のようにいることは、今私が生活している上では重要な位置であるのだろうと思うのです。


太陽がなければこの場所で生きることはできない。
太陽が隠れて見えなくなれば暗くて寒くて不安になる。
でも(未来はどうなるか分からないけれど)今確実に太陽は存在しているという安心感があって、太陽の強すぎる光と熱すぎる温度を身に受けるには私がいる地点くらいが合っている。


それが今の私から見たしげおかくんへの距離なんだと思います。


だから、私はまだ手を伸ばしても到底届かないところにいて、太陽の欠片を掴んですきだということもできません。


火傷して溶けてしまうから。


いつになったら、どうしたら、すきになれるのでしょう。


なんだか二年前よりさらに遠ざかってしまった気がするけれど、


いつか、胸を張ってあなたが好きだと言えますように。

「溺れるナイフ」の感想と考察

f:id:eightxjohnnist:20161101173651j:plain


10月18日、昼に新潟にいたはずの私は新幹線に飛び乗って、夕方には有楽町にいた。

有楽町マリオンの11階の有楽町朝日ホール
エレベーターを降りるといかにも業界関係者というような、プレスシートを持ったジャケットの大人の人が沢山いて、ホールのロビー入口には筆文字で

「『溺れるナイフ』完成披露試写会」

と書かれていて、上映されるホールの舞台上にはパネルが立てられ、スクリーンには水の中に「溺れるナイフ」と題名が書かれたようなデザインが映し出され、舞台の両端にはキャノン砲が設置され、客席には上から下までずらりとメディアのビデオカメラが並んでいた。

私は完成披露試写会というものを体験するのは初めてだったが、きっとこれはとても期待値の高く、力の入れられている作品なんだろうと、嬉しくドキドキとして地に足がついていないふわふわとした気持ちになった。

18時半、会場が暗くなり、司会者の方がお話しされた後、客席の一番後ろから菜奈ちゃん、すだくん、しげおかくん、萌音ちゃん、志磨さんが降りてきて舞台上に並び、その後から山戸監督が舞台袖から登場し、舞台挨拶がなされた。

挨拶からは、すだくんとしげおかくんの仲の良さやら、菜奈ちゃんと萌音ちゃんの可愛らしさやらが沢山伝わってきたが、山戸監督の話す言葉はやはり私の脳では想像しえないくらい壮大で、渦を巻くように深さを持っているものだと8月のイベント以来に感じた。







ここから本編ネタバレ含みますので、見たくない人は回れ右!!!








f:id:eightxjohnnist:20161101173924j:plain



画面が暗くなり最初に映し出されたのは、パステルピンクとフリルとリボンとファンシーな音楽に包まれた夏芽。
しかし「ゆめかわいい」の如く、パステルピンクのスタジオは薄暗く、夏芽の表情も輝きをもつものではなくほの暗い。
それを見て、きっと夏芽はこの世界が好きではないんだろう、と思った。

しかし、その後引っ越しをする車内や、おじいちゃんの家の民宿の宴会会場での夏芽はもっともっとつまらなそうで、学校に通い始めクラス中が騒ぎ話し掛けた時の夏芽は相変わらず目は光っていなかったけど、少し口角が上っていて、それを見て、夏芽の指標は都会が好きとか田舎が嫌だとかではなく、人と違うことをしていて、人より面白い人生を歩んでいる気持ちになる世界が好きだという、ただの皆の持つ自己顕示欲、自己肯定感だったのだろうと思い直した。





「この海も山も俺は好きに遊んでええんじゃ、この町のもんは全部俺の好きにしてええんじゃ」


しかし、夏芽の前に現れたのは、金髪を靡かせ教室の隅で夏芽への興味も示さず、高圧的な視線を一方的に浴びせ、好きなように逸らす、誰とも違うコウという存在。
夏芽からすれば、自由に動き回り、特別な扱いをしてくれる皆の中で自分に関心を示さずあしらい、逆に皆から「特別じゃけぇ」と言われる存在であるコウは興味の対象であり、その特別なコウに認められるということは自らに最も自己肯定に近いものを得られるということに感じたのではないだろうか。





f:id:eightxjohnnist:20161101174052j:plain


夏芽「私あの子に勝ちたくて、写真集引き受けたんです」


だからこそ、有名写真家である広能の写真集を撮ることでコウに少しでも近づきたかった。コウの視界に入り続けたかった。
それが「あの子に勝ちたくて」という言葉だった。
でもその認められたい、視界に入りたいという気持ちは対抗心と恋愛感情のあやふやな境界線のようなものであり、夏芽の心も知らぬ間に後者にシフトしていた。というより、恋というものを理解していない15歳の夏芽には、それが恋愛感情であると認識する前に、対抗心であるという認識に自らを収めてしまったという方が正しいのかもしれない。






夏芽「レンズの向こうにいるみたい…」
コウ「お前はいっつも俺をこういう目で見ちょる」


そんな夏芽が自らのコウに抱くものが恋心であるという認識を持ったのが、写真集をコウに見せたシーンなのではないか。
下駄箱で話していたカナの存在が見えなくなったように、通りかかったコウに「写真集できた…」と呟き、そのまま走って逃げる。
追いかけてほしいけど捕まりたくない。見てほしいけど見られたくない。
認められたかったのに、出来上がった自分の写真は、夏芽にとって絶対的な輝きを持つコウには遠く及ばないものであるのだと理解した。
しかしコウは、夏芽が唯一広能の向けたカメラのレンズの向こうにコウを思い撮られた写真を見て、「お前はいっつも俺をこういう目で見ちょる」と言い当てた。
それはきっと夏芽の、広能や他の人間に対する視線と、コウに対する視線が全く別であるのだと、夏芽自身が初めて気がついた瞬間であり、同時にそれが恋愛感情によるものだと気がついた瞬間なのだろう。

それと同じく、広能の前で「それも俺のモンじゃ」と言い放ったように、コウも、その時点で夏芽は海や山と同じように自分の側に存在させておきたいモノという欲のようなものが生まれ、夏芽の首筋に零れたサイダーを舐めとり、キスをしたあの二段階からは、動物的なマーキングのようなものから、人間的な愛情が垣間見えたように感じえた。





コウ「つまらんのぉ!お前は綺麗じゃけぇ、俺のもんにしたろ思っちょったけど、もぉええわ」


夏芽はそれでもまだ普通の子供で、女の子特有の相手への同調、確認行動が出てきてしまう。

夏芽「映画出ないかって言われたの、でも断ろうかなと思って!だってコウちゃんと一緒にいられないじゃない?」
コウ「つまらんのぉ!お前は綺麗じゃけぇ、俺のもんにしたろ思っちょったけど、もぉええわ」
夏芽「なんで!?やだよ!コウちゃんが決めてよ!」
夏芽「コウちゃんが悔しがるくらい面白く生きてみせるんだから!」

コウの言う綺麗は、ただ夏芽がモデルで可愛らしいということではなく、何にも染まらない、周りの奴らとは違う特異で稀有な佇まいが大好きな海や山のようで、綺麗で、それらと同じように自分のモノにしたい対象だったという意味を持つのだろう。
にも関わらず夏芽は普通の奴らのような事を言い始める。それでは稀有な存在ではない、面白くないと思うのは当然の心境だったように思う。
それに、コウからして夏芽の立つ芸能界は、コウの身の回りに存在する正直な海や山と違い、ドロドロとした何か不吉な得体の知れぬものが渦巻く別世界のように感じたのかもしれない。
そのために代々受け継がれてきた数珠を自分が助ける代わりとして夏芽の手に巻いたのだろう。

コウ「着けとけ。お前のことを守ってくれるかもしれん。」





f:id:eightxjohnnist:20161101185404j:plain


大友「コウ!!なしたんない!!」


そんな身代わりの数珠と交換し、コウの腕に巻かれた夏芽の赤い数珠が弾け散ったのは火祭りの最中だった。
祭りで「見つめ合う」はずだった夏芽の目線は知らない男に向けられ、どこかに走り去り、その直後「お互いを守ってくれる存在」として交換した、夏芽の分身のような真っ赤な数珠が千切れた。
それは完全に夏芽への不吉な暗示、危険の前兆であるのは明らかだった。
そうなれば、もう何をもコウを止めることはできない。あたふたとするカナの説明も、追いかける大友の叫びも、頭には入ることなく、夏芽を一刻も早く見つけ守らなければいけないというただそれだけに支配されていたのではないか。
しかし、結果として間に合わなかった。
間に合ったが助けることができなかった。
コウも夏芽も「自分のせいで」互いが傷を負った。
そして、夏芽にとって神さんのような存在であるコウが、自らを神さんに近いものとして捉えるコウが、何にも負けるはずのない特別な存在であるはずのコウが負けた。イコール、それを否定されたのだ。





f:id:eightxjohnnist:20161101185435j:plain


大友「お前ら品ないよね、食う気失せたわ」


夏芽は大友やカナと共に高校生になり、コウは高校には進まなかった。
夏芽は高校デビューし華やかに笑うようになったカナとは相反するように、噂の対象になり、孤立し、笑わなくなった。
この頃、ある種一番の脅威は陰で笑い噂するクラスメイトではなく、カナの存在だったのではと思う。

カナ「夏芽ちゃん!やっと話せた~、心配しとったんじゃ~」「コウちゃんは港の方におるよ、コウちゃんも夏芽ちゃんに会いたいと思うんじゃ~」

おどおどとした口調で目線を空に漂わせながら話していた中学時代とは違い、薄く化粧をし、垢抜け、まっすぐ夏芽の顔を見つめまとわりつくような話し方で夏芽に話しかけるカナは、本当に純粋に夏芽を想い言葉を掛けたのか、はたまた周りで陰口を叩く奴らのような思惑を持ちながらそのように言ったのか、全く分からず気持ち悪ささえ覚えた。
夏芽にとっても、ある意味で一番の脅威だったのではないか。

そんな中、ただまっすぐな目線で夏芽を見つめ続けた大友の存在は、それこそ薄暗く湿った山の木々の合間から射す夏の太陽のように思えた。
襲われた夏芽について陰で勝手な噂を作り上げ笑うクラスメイトの女子達に、クラスの真ん中で

大友「お前ら品ないよね、食う気失せたわ。」

と嫌悪感を露わにして言い放った後、そんな顔をしたとは夢にも思わないような柔らかな笑顔で、独り校庭の隅で弁当をつつく夏芽に声をかける。
きっと「久々じゃのう」という言葉から、大友と夏芽も、事件の後、高校に入学し制服の袖を捲るようになる季節まで、関わることがほとんどできなかったのだろう。
にも関わらず、事件の前の楽しかったあの頃と全く変わることなく夏芽の前にまた現れた大友は、彼女の拠り所になるに違いないと思わざるを得ない。





f:id:eightxjohnnist:20161101174212j:plain


大友「お前にとって今更なんか」


校庭の隅の階段に小さく座っていた夏芽に、一緒に食べるかと聞くのではなく、勝手に野球部のベンチに座って夏芽を呼ぶ大友。
座ったらその一人分空いた空間に「なんでそんなとこにおるんじゃ、もっとこっち来いよ」と距離を詰めさせる大友。
「なぁ、なんでお前ら別れたん?」と、きっと今まで暗黙の了解のように誰も触れてこなかったコウとのことにまっすぐ疑問をぶつける大友。
多分様子を伺うような割れ物を扱うような接し方では閉ざされてしまったであろう夏芽の心を、ここにだけ存在するある意味で有無を言わせない強引さのようなものが、童話『北風と太陽』の太陽の如く開かせていったのだろう。
そして、なぜ別れたのかという疑問に対して、

夏芽「今更?」
大友「お前にとって今更なんか」

というこのやりとりが、私にはどうにも刺さって抜けない。
あんなことがあって、当たり前のように別れることになってしまい、それを自らに落とし込むためにも今更常識だと言い聞かせ内に秘めた夏芽に対し、本当にそれでよかったのか、お前の想いは変わった訳じゃないんだろうと言い聞かせてコウやあの頃への想いを掬い上げているような気がした。





f:id:eightxjohnnist:20161101174241j:plain


大友「東京じゃ吸わんのか?」


シーンが変わると、太陽の光の元笑顔で大友の自転車で二人乗りをする様子になる。
立ち漕ぎで登った緩やかな坂の途中には真っ赤な椿が咲き乱れている。
それを一つもぎ取り夏芽に渡し花を吸う様子を見つめ、大友も花のうしろを咥え蜜を吸う。

夏芽「え、どうやって吸うの?」
大友「東京じゃ吸わんのけ?」
大友「それはハズレじゃ!」

嗚呼なんて美しく楽しく穏やかな青春。緑の葉の中に散りばめられた真紅の椿と、白い制服。強いコントラスト。
しかし、目の前をさらに輝く白金の髪が靡き、そこに嫌でも映える赤黒い血の滲む傷跡と黒く冷たい視線の通り過ぎた瞬間、咥えた椿は地に落ち、地を赤く染めていた花弁は空に舞った。
夏芽の目はそちらに奪われ、あんなにも晴れ渡って明るかった空気は薄曇り影を落とした。
それほどまでにコウの存在は威力をもつものであるように見え、そして夏芽はコウのことを自らの中落とし込むことなどできてはいなかったのだと思った。





コウ「逃げ場が見つかってよかったのぉ」

うろつくコウを追い掛け、船で沖に出てしまったふたり。
怒る夏芽と対照に、茶化し馬鹿にするように笑うコウ。
コウ「青春ごっこなんてやめぇや」「逃げ場が見つかってよかったのぉ」
夏芽「大友といると心が落ち着くの」
やはり大友は夏芽の心をひとつとして捉えているわけではなかった。
コウへの想いを薄めるための、一時の安らぎの得るための逃げ場であり休憩所だった。





夏芽「ねぇ、好きにならないの?」
大友「おう、そういうんはええんじゃ」


コウの存在が深く青い海ならば、大友は海を照らし海底にまで射し込む太陽の光。
夜のバッティングセンターで体育座りでソーダ味のアイスを頬張りながらなされる二人の会話は、ただふつうの、そこら辺の夢と進路に悩む高校生のもので、笑い飛ばしながらそんな話ができるようになったのは暗い海底からゆっくりと海面に引き上げた大友の明るさによるものであるのはきっと間違いない。
だがその中で夏芽は、大友は、あたたかく夏芽を支える大友の中に恋心が芽生えていることに、気付いた。
しかし大友は「そんなんはええんじゃ」とさらりと言い捨て、バッティングを始める。
私には、それは夏芽に対してではなく、大友が自分自身に、自分は夏芽にとって、夏芽は自分にとって、そういう存在ではないのだと言い聞かせているようにしか思えなかった。そして「映画行かん?」とバットの勢いに乗せて、友達として誘うのである。





f:id:eightxjohnnist:20161101174500j:plain


大友「椿の花みたいじゃ」


映画に行くことになった夏芽は、その夜光を落とした自分の部屋で、体育座りをしてペディキュアを塗っていた。
一本一本の爪に乗せられる深い青。その筆の動きと共に頭に浮かぶのは、爪と同じ深い青の海を泳ぐコウの姿。
しかし一本だけ、たった一本だけ、違う色が夏芽の爪に乗せられた。それは椿のような真紅。そしてその赤を乗せる瞬間、一瞬だけ映し出されたのは、真っ赤な椿を咥えながら光を纏うように笑う大友の姿。
そして、赤が乗せられたのは、左足の薬指だった。
この瞬間、夏芽が赤いペディキュアを塗ったこの一瞬だけでも、彼女の中には確かに大友がいて、彼女にとって大友が一番大切な存在であったことは、狂おしいほどの事実であり、感嘆に息をもらさずにいられなかった。

しかし薄着でいたからか、風邪を引いてしまった夏芽に大友が見舞いに来る。
寝間着から着替えようと、「ちょっと待ってて」と障子越しに言う夏芽に、着替えだと気付かず覗きそうになり、服が投げ捨てられて気付き目を逸らしあたふたする大友。
落ち着こうと障子に背を向け正座する大友。
純粋だ。めちゃくちゃ純粋で、めちゃくちゃに可愛い。
着替え終え、ベッドに腰掛けた夏芽の足に気付く。

大友「おしゃれさんなんじゃのう。ここだけ色が違うんやな、椿の花みたいじゃ。」

そりゃあそうだ。貴方のことを考えて塗ったんだもの。
言いようのない気恥ずかしさと愛おしさに溢れたシーンであり、夏芽の顔も綻ぶ。
照れ隠しのように爪を隠し、眉毛を整えた大友をいじる夏芽。眉毛いじりに照れ反抗する大友。
むずかゆく、ふわふわとした空気の中「眉毛(笑)」「眉毛はやめろ(笑)」と冗談を言い合う二人。

望月(笑)!大友(笑)!望月!大友!望月、大友、…夏芽、…大友…

少しずつ近づきながら、少しずつ真面目に、少しずつ小さくなる声で名前を呼んで、ほんの少し、一瞬触れるだけのキス。
明るく夏の日の射し込むあたたかい空間での二人の微笑みは、大友にとっては自らの、夏芽にとっては導かれるための、幸せの具現のように見えた。

しかし、その後夏芽がコウと接してしまったあと、彼女の足の爪には、もう深い青しかなかった。






広能「君とならもっと遠くに行けると思ったんだけどな。」


大友と付き合い穏やかに過ごしていた夏芽に掛けられた事件を思い出させるような映画のオファーと突如現れた広能。
反発する夏芽と居合わせた大友を見て、

広能「君が今の彼氏?」「君たちお似合いだね。」「説得しようと思ってわざわざ来たけど、もういいや。つまんない。」「君とならもっと遠くに行けると思ったのにな。」

と勝手な言葉を並べ、帰って行った。
広能の中に存在したのは、特別な存在であるコウに恋し、神格化した、孤独で特別な夏芽だったが、普通の高校生である大友と付き合い、愛され、普通の幸せを手にした夏芽は広能にとっては興味の対象から外れてなんらおかしくはなかったのだろう。
「お似合いだね」も、「(つまらない彼氏につまらない夏芽ちゃんは)お似合いだね」という揶揄にしか聞こえない。





f:id:eightxjohnnist:20161101185517j:plain


「俺はお前に何にもしてやれんのや」


雨の中小さな社にお参りし、山の中を歩く夏芽の前に、コウが現れる。そしてそのまま狭く暗い屋根裏部屋で身体を重ねる。

コウ「初めて会うた時、光って見えた」
夏芽「そんなわけないじゃん…!」
コウ「お前はもっと遠くに行け」
コウ「俺はここで神さんと暮らす」

コウは特別だ、コウは自分の光だと考えていた夏芽と同じく、コウも夏芽は特別で、夏芽は輝く存在だと思っていたのだ。
しかし夏芽は共に居たいと言ったが、コウは離れようと伝えた。
それは、コウが見た夏芽の光は、コウにとって自らが掻き消してしまった光であり、守れなかった光であるから。
神さんに近い存在であると思っていた自分は全くそれとは違い、大切なモノを守ることも輝かせることもできないことを知らしめられてしまったから。
大切な光である夏芽の輝きがもっと満ちたものにするには、夏芽をさらに美しい神さんに近い存在にするには、自分の隣に縛り付け手にしていてはいけない、自由にしなければいけない。
だからコウは夏芽に背を向け、見えないように堪えきれない透明な涙を流しながら、謝り、遠ざけた。






大友「俺じゃ駄目なんか」


疲弊した夏芽に心配し無言で優しく包んだ大友。そして大友が夏芽を連れて行ったのは開店前の誰もいないスナック。

大友「大丈夫、まだ開店まで全然時間あるから」「ほら、これ持ってって?」「どんどん歌うぞ~何入れる?」

夏芽が現れた時は眉間に皺を寄せ、心配そうに見つめていたのに、スナックに連れて行った途端そんなものを見なかったかのように、何にも気付いていないかのように、よく喋り明るくいつも通りのように振る舞う大友。
しかしそれは何かあって自分に伝えられるであろうことを聞きたくないという思いの表れでもあったように感じる。

夏芽「別れよう…映画出ることにしたの、だから東京に戻る」
大友「…俺遠距離でもええよ?」

大友の、少しだけの反抗。ただ寄り添って夏芽を見つめ支え、想いを抑えてきた大友の、小さな我が儘。

夏芽「私下手だから、夢を一つに絞ってやりたくて……ごめん、私の勝手…」
大友「コウか…?」
夏芽「…」
大友「俺じゃだめなんか?」

夏芽「嫌いになって…」
大友「大好きじゃ…」
遠距離でもいいと、小さな反抗をした大友。
だが大友には分かっていた。夏芽にそんな顔をさせるのは、そんなにも思い悩ませるのは、コウしかいないことを。
そして夏芽自身も、仕事自体は事実だとしても、それをコウから離れる言い訳にしていることを、大友と別れる理由付けにしていることを分かっていた。
だから言い当てられ何も言うことができなかった。
だが、それは大友にとって辛すぎる現実だった。

大友「笑えや…笑ってや…」

自分には夏芽の心は向いていない。
夏芽の中にはやはりコウが圧倒的に居る。
そういうことが突きつけられた。
そして、きっと大好きだったであろう笑顔が存在しなかったから。
自分が隣にいると夏芽は笑ってくれたのに、ボロボロと涙を流し苦しそうに、申し訳無さそうにする夏芽しかそこにはいなくて、もう自分が彼女を笑顔にできないのだと思ってしまったから。
でもそこで無理やり自分の元に引き止めようとも、コウに向き合わせようとも、説得しようともせず、大友が取った選択は夏芽を笑顔にさせることだった。
ガバッと起き上がり、泣きそうな叫ぶように、声を枯らしそうなくらいに、

大友「歌ったるからな!見とけよ!」

と、田舎から東京に向かう意気込みを詰め込んだような『おら東京さ行くだ』を歌った。
途中から夏芽も巻き込み、二人でぴょんぴょんと跳ねながら、回りながら、歌いきった。

大友「頑張って来いよ!!」
大友「今度こそ、友達じゃ。」

歌い、涙の跡を残しながら笑顔を見せた夏芽に、さっき見せてしまった想いを押し込み、迷いなく行けるよう、文字通り背中を押したのだ。






ここまでダラダラと書き連ねて来たが、正直クライマックスのシーンは解りかねる部分が多かった。
二度目の火祭りで、夏芽は小屋で寝てしまい、夢であの男に襲われ、コウが助けに来る想像をする、のだと思っていた。
しかし、カナが夏芽に向かい恨みに溢れたような目で

カナ「これはこれから海に捨てる。夏芽ちゃんはもうコウちゃんに関わらんで。」

と言い、血の付いたナイフが海に沈んでいくこと。
コウと夏芽が真っ白なワンピースと真っ白な作務衣でバイクに跨がりながら、コウが

コウ「お前は何も気にせんでいい」

と言っていること。
そこから、きっとあれは夢ではなく、現実であるのだろうとも思った。

しかし、あの白装束でバイクに跨がる姿はまるでウエディングドレスのようで、あれは現実ではなく、夏芽の頭の中で作り上げた笑顔と自分に言い聞かせた言葉なのかもしれないとも思った。

そしてあの夢だと思い屋根裏に寝そべる姿が、はたまたそこまで全てが広能の映画だったのか、と思ったが、それは私には分からなかった。






♪ハンドメイドホーム


「金色の空 黒い満月
張りぼてのステージ 手づくりの夜
大好きな悪魔と引き裂かれ
王子様とキスをした
~中略~
惰性のにばん 君がいちばん
嫌いな言葉をわたし歌いたい
気持ちをおさえてできるだけ
たのしくするから嫌わないで
~後略~」

これは不良たちと屯するコウと、それを追いかける夏芽を映したシーンである。
笑顔を無くした夏芽が、逃げるようにふらりと歩き回るコウを一心に追うシーンには違和感もある可愛らしいメロディーラインだが、歌詞があまりにも夏芽からのコウと大友への感情そのものだった。
神も悪魔も人外の信仰対象として存在するものであり、王子様は一緒になれれば幸せの保証された人間としての存在である。
そして普通の人間であれば一番になり得る存在である王子様でも、一緒にいれば不幸をもたらすかもしれないが妖しい魅力をもつ悪魔という存在が居る限り、わたしにとっては二番手にしかなりえない。





f:id:eightxjohnnist:20161101175244j:plain


赤い椿


作中に何度も出てくる、大友という存在の象徴である赤い椿。常盤色の深い緑から浮き出すような丸みを帯びた赤。
なぜ大友は椿に例えられたのか。なぜ赤い椿なのか。

椿の全体の花言葉
「控えめな優しさ」「誇り」「私は常にあなたを愛します」

赤い椿の花言葉
「控えめな愛」「気取らない美しさ」
「謙虚な美徳」「気取らない魅力」
「見栄を張らない」「慎み深い」「高潔な理性」

まさに大友そのものではないか。
俺が俺がとしゃしゃり出ることなく、寄り添い、包み、支え、求められたときにそっと手を差し伸べる。
しかし心の奥底で夏芽を想い愛し続けた。
そして何より、西洋の花言葉である

「あなたは私の胸の中で炎のように輝く」「わが運命はあなたの掌中にあり」

は、大友が夏芽に対し抱き続けた想いの体現であるようにしか思えず、私はただただ泣いた。






大友という男


夏頃からの数々の関係者試写会等により、ぽつぽつと映画の感想がTwitterに上がって来ていて、そのどれもが讃辞を述べたものであった。
そしてその中で、主演であるコウや夏芽でなく、大友の名前が何度も何度も上がり、その度に私はしげおかくんの演技に対する期待や、関係者に見つかっていくという高揚感と、それと同時にハードルがどんどん上げられたことによって実際観たときに私がそれを感じ得ることができるのかという不安、そうでもなかったと思ってしまうのではないかという危惧があった。
しかし、全く不安も危惧も必要なく、流れてきた呟きは過大評価でもなんでもなかった。

大友はしげおかくんであり、しげおかくんは大友だった。

相手を想う心があり、天真爛漫、包み込む優しさと男らしさ、少年のような明朗さ、思春期の葛藤。完全に良い意味で、「田舎の普通の男の子」。
だが大友の自分の影の部分を超越し大切なものを照らし続ける圧倒的光輝は、誰よりも前に立ち皆を導く、パブリックイメージとしての、ジャニーズWESTのセンター・重岡大毅の放つ耀きと、種類は違えど似たような、眩い光であり、「熱く赤く燃ゆる太陽」そのものだ。

そしてそんな太陽のような大友は、公式のキャラクター設定として、夏芽に想いは寄せるがそれをあまり見せないような人間だと、しげおかくんもインタビューで何度も言っている。しかし、しげおかくんは「そんなこと自分じゃ絶対できない」と言った。
そして試写会を観た方の感想に、大友が「生々しい」「男の欲望をちらつかせてくる」というものがあった。

その通りだった。

役柄を聞く限りでは爽やかで優しい想いを留めた少年だが、大友の視線の中には途中から、満たされない、満たしたい、生暖かく息遣いの聞こえるような欲求が時折見え隠れしていた。
そこが、漫画の中の大友ではなく、重岡大毅という人間に載せられた大友であると最も感じた点であり、イコール、重岡大毅という人の生暖かさだと気付いてしまい、それこそ彼に神格化に近い見方をしてしまっている私にとっては、どうにも息苦しい気持ちにさせられた。






最後に


もう観てから二週間も経ってしまったし、一度ではシーン毎の断片的な記憶になってしまったり、台詞も曖昧なところばかりだったりするし、いい加減長々と書きすぎたと思うから、終わりにしようと思うのだが、やはり最初からずらずらと振り返っていくと、夏芽にとってはどれだけ光を注いでも大友は彼女にとって「光」であるとは認識し得ず、コウがどんなに影を落としてもその影すら夏芽には「光」であった。
そしてその光を人間(自分)に落とし、万物を操るのは「神さん」であり、海も山も空も全部俺(コウ)のモノであるということは、コウ=神さんなのだ。
そしてきっとコウにとって、自分の操れない、遠く超越的な存在である美しき「神さん」だけが自らを照らしてくれる「光」であり、自由で自分の知らない遠い世界を行き来する美しい夏芽は、神さんに近い存在≒光であったのではないかと思う。



「君だけが、私の光。」



f:id:eightxjohnnist:20161101185549j:plain







公開おめでとうございます。
椿のように花開き、海のように心に透明に深く沈み、太陽のように誰かの光になりますよう。

2016.11.5

八月を全てくれないか


f:id:eightxjohnnist:20160702015911j:plain


高校3年生のこの時期。
じとっとした肌にまとわりつく湿気と、窓の外にはどんよりとした曇り空。

無理やりまとめて袖を捲っていた黒のいかにも熱を吸収しそうな学ランからやっとおさらばし、見た目にも涼しげな白のYシャツ一枚で、ぱたぱたと控えめに下敷きから風を送りながらおじいちゃん先生の話を耳に入れる。

実際情報として取り込まれているかと言われれば、その手前の視覚的情報に脳のキャパシティを奪われているが。

窓際の隣、後ろから2個目の俺の席からは、黒板に目を向けた時に嫌でも目に入る窓から3列目前から2個目の席。
幼い頃から見慣れた、自分より小さく柔らかな背格好。
今日は暑さからか肩より少し伸びた黒髪を耳の後ろでひとつに括ってある。
おじいちゃん先生の書いた読みづらい文字を、真剣にノートにあの少し癖のあるしっかりした字で、あそこに出ているパステルカラーのペンで彩りながら書き写しているんだろうなと思うと、それだけで、はぁと息が漏れる。



そんなことに気を取られていると、現実に引き戻すようにチャイムが遮った。

最低限の情報が書き殴られたノートと教科書を仕舞っていると、いつもの通りのゆるく鼻にかかった声が俺の名前を呼ぶ。

「かみちゃんパン買い行こー」
「ん、ちょお待って」

隣のクラスから迎えに来た、Yシャツの袖を既に肘までくしゃっと丸め込んだしげと並んで購買に足を進める。


購買のパン屋で放課後用にしげは焼きそばパン、俺はメロンパンを買い、自販機に足を向けると、その前にさっき見つめていたあのひとつしばりの黒髪が目に入った。
「ていっ!」
ガコン、という音とともにしげの押したカルピスが落ちてきた。

「あ!何するん!私が買おうとしてたのに!」
「え、いる?」
「いらん!」

と横でわちゃわちゃと効果音がつくような言い合いをするのを聞きながら、レモンティーのボタンを押した。

「ん、」
「え、ええの?」
「ええよ、レモンティーでよかった?」
「うん、ありがとう!どっかの誰かとは全然ちがうねぇ?」
「誰のことやろなぁ~?」

勝手に買ったカルピスを飲みながらとぼけるしげと彼女を横目に、今度は自分の為にさっきと同じボタンを押した。



教室に戻り、しげは俺の前の席のイスをひっくり返して向かい合って弁当を食べる。毎日の光景。
もぐもぐとしながら話す内容は、あの先生のボケが寒かったとか、誰々のモノマネが激似だとか、あとは…進路の話とか。

「ほんまにさぁ、あんな面談ばっかしてどうするんもうそんな俺言うことないし?って思わん?もぉ次の大会で部活も終わりやしなぁ…かみちゃんはどんな感じ?進んでるん?」
「んー、なんかあんま、びみょーな感じ…?あんま集中できひんねんな家でやってても。」
「そーなんやぁ…でも先生言うてたやん、波?みたいな、グーン伸びるときと伸びにくなるときある、みたいな」
「そぉなんやけどなぁ…」

あと数ヶ月と口を酸っぱくして毎時間のように言われても、どうにもまだ遠い事のようにも思えて、ひとりでは逃がすことのできない漠然とした焦りとよく分からない自信のようなものを、口に出すことでお互いゆるゆると中和しているように思えた。



気温も上がり、お腹が満たされた状態での鴨長明なんかは、良い子守歌のようで、今にも船を漕いで大海原にでも出てしまいそうだったが、前から2番目でノートと黒板を行き来する後ろ姿のおかげで大航海の予定の船は港に帰ってきていた。

終業のチャイムがじめじめとした教室に元気を取り戻させる。

HRで配られたプリントを丁寧に端を揃えて畳んでいると、俺の名前を呼ぶレモンティーのような甘酸っぱい声。

「かみちゃん!今日どうするん?」
「残るで、今日も部活やろ?」
「うん!あ、でも遅かったら先帰ってもええからね?」
「わかった」
「じゃあ行ってきまーす」

ほぼ毎日交わされる会話。
でも一度だって彼女の最後の言葉通りにしたことはなかったし、これからもするつもりはない。


電車の時間を待つ、帰宅準備万端の奴らとしばらく話して、そいつらも見送ると、教室には自分の動く音と外から聞こえるしゃべり声が響く。
ガサガサとリュックから参考書とルーズリーフを取り出し、机の右端にレモンティーを置く。


しばらくシャープペンを走らせ、ルーズリーフの表面が埋まろうとしたとき、開いた窓からまだぬるい風とともに吹き抜ける爽やかな歌。

紙の上を走っていたシャープペンの動きが止まる。

あのメロディーラインに乗せて彼女の甘酸っぱい歌声が俺の元へ飛んで来ているのだと思うと、このまま自分の気持ちが逆に君の元へ飛んで伝わるんじゃないかと錯覚を起こすようで。

ぼうっと惚ける気持ちと届かない想いに呼吸がくるしくなる気持ちとが、みぞおちの辺りで混ざり合っているのを、右手にあるレモンティーで流し込んで、耳は窓の方に向けながらまたシャープペンを走らせた。


そのままひたすらに問題を解き続けて、ちょうど5枚目のルーズリーフが終わろうという時、ふと顔を上げると歌声は止んでいて、校庭からの掛け声やホイッスルの音もガヤガヤとした話し声に変わっていた。

ふぅ、とひとつ息を吐く。

シャープペンを置き、参考書を閉じ、黒くなったルーズリーフ達をまとめていると、ぱたぱたと軽い足音が廊下の遠くの方から近づいてきて、思わず上がってしまう口角を抑える。

「はぁ!かみちゃんおまたせ!」
「お疲れさん」
「しげは?まだ?」
「うん、まだ来てない」

勉強道具をリュックに詰めて席を立ち、教室の扉の前でそんなことを言っていると、白いYシャツの腕をまた捲って前髪を上げたしげが走ってきた。

「あ、しげ!」
「はぁ…!間に合った…!」
「お疲れさん」
「もう遅いから帰っちゃおうかと思った!」


玄関で靴を履き替え、外に出ると、風が涼しくすべるように吹く。
玄関から彼女を真ん中にして歩を進める。

ニコニコと目を細めて話す彼女の笑顔は、俺の向くのと同じ方をよく向いている、ような気がする。
俺がひどく屈折した見方をしているのかもしれないけれど。
気付かれないように、気付かれるために、横顔を見つめながら歩く。



いつもの丁字路にたどり着いた。

「じゃあな~」
「おう、」
「また明日ね!」

1人左に向かうしげに背を向け、歩き出すと、さっき同じ方向を向いていた君の顔が、今度はよく見える。


誰もいない道にふたり分の足音が響く。
1日で数分間だけの優越感。
そこから生み出される独占欲。
俺より10cmは低い身長。俺より足ひとつ分短い歩幅。俺よりゆるく華奢な肩幅。俺より一回り小さな手。
全部俺だけが隣で見られるようになればいいのに。
そんなことを頭の端で巡らせながら、この時間だけ俺だけに向けられる笑顔と言葉に相槌を打った。


あ。
ふと思い出す、教室で聞こえてきた会話。
今年の花火大会は7月30日らしいということと、模試の次の日だということ。


…そしてその花火大会はいつも3人並んで見ていたこと。


なぁ、2人であの大きな花火を見たいと言ったら、君はどんな反応をするのだろうか。


花火のように輝く笑顔を俺の方だけに向けてくれるようになるだろうか。


君との最後の夏を、最高の8月を、俺に全てくれはしないか。

しげおかくんをすきになりたい


f:id:eightxjohnnist:20160223171957j:plain


私はしげおかくんがすきです。
あの溶けるような歌声も、えくぼのできるくしゃくしゃの笑顔も、小さなおてても、大きな口も、ヘアアイロンがかからなかった黒髪も、しっかりとした肩幅も、もちろん全部。

でも、見た目などについては言っていても、私はしげおかくんという存在を「すきだ」とあまり言いません。
言いたいけれど、言えないのです。
だって今の私は、しげおかくんをすきだなんて言える場所にいない気がするから。



すきだと言うためには、しげおかくんはあまりにも高いところに居すぎる。
もっと低いところに居てくれたら、簡単にすきだと口にできるのに。
私がもっと高いところに行けたなら、すきだと言う勇気ができるかもしれないのに。


しげおかくんは、とても強くて、深くて、優しくて、漫画や小説や、夢の中の人のような感覚がするのです。
なのに、それなのに夢の中の人じゃない。
今この世界で、すぐ近くに存在していて、同じような時を歩んでいる。
非現実の世界の人だったり、ずっと昔の偉人だったり、遠い国の人だったら、私はもっと簡単に、彼がすきだと口にできていただろうに。
同じ日本に住んでいて、年も近くて、現実にこの目で見て本当に存在するのだと知っている。
だからこそ、こんなにも違うんだと突きつけられているような、お前はどうしてこんなに違うんだと自分で自分に責められているような、そんな気持ちになるのです。


しげおかくんは、「人生も、青春も全部捧げてきたから、(悩んだ時期にも)一回もやめたいと思わなかった」と10000字インタビューで言いました。

なんで、辛い時期に、不安が頭に渦巻いた時期に、焦った時期に、その状態から逃げたくならなかったの?もういやだと思わないの?どうしてそんなに強く心を保てるの?


しげおかくんは、「ジャニーズに入るまでの、流されて一生懸命になることもカッコ悪いと思っていた生き方が汚点」だと言い、「ジャニーズに入って人生のすべてを学び、言葉じゃ足りないくらいいろんなことに気づかせてもらった」とも言いました。

どうして、そんな風に汚点だと言い切れるの?それを後悔するのではなく、汚点だと言い切れるくらいに生き方を変えられるの?


しげおかくんは、「早起きとかしてしんどいなと思うこともあるけど、おとんが家族のために30年、40年不満も自慢も言わずに朝早く出て夜遅くまで仕事をし続けてきたと気づいてからは、"がんばってんねん"とか口に出すのってクソダサいなって思えて」きたとも言いました。

なぜそんなことに気づけるの?仕事をして、親と同じような立場に立ったら気づくのかもしれないけれど、どうして不言実行を実行できるの?



もう、彼の文章を読み、彼の言葉を聞く度に、今の私は彼に近づけていないと感じざるを得ないのです。

だって私は、大変なことがあったり、乗り切れるか分からないことがあったり、辛いと思うことがあったら、投げ出してしまいたいと思ってしまうし、やめたいと思ってしまう。
昔の自分がもっと頑張ればこうなったかもしれないのにと考えたり、あまり思い出したくない自分がいたりはするけれど、それを汚点だと割り切れるほど今の自分は何も変わっていないし、どうすればいいかも分かろうともしていない。
頑張ったら認めて欲しいし、つかれたら口に出して吐き出してしまいたいと思う。
どう考えても、私がつらいとか大変だと思っていることなんて、しげおかくんのほんの何分の一、何十分の一のはずなのに。

何をとってもしげおかくんの覚悟や強さからは今の私は程遠い。



だからか私は、最近「しげおかくんのようになりたい」と思うようになりました。

少しでも強くなりたい。
少しでも前を見続けたい。
少しでも地に足をつけられるようになりたい。
もっと一生懸命になりたい。
諦めない人になりたい。
なりふり構わず頑張れる人になりたい。
素敵な人になりたい。
魅力的な人になりたい。
私にとってそれを体現する存在がしげおかくんなのです。



正直、逃げたい時や自分がダメな時に、目指す人を思い浮かべるのは、よい道しるべにもなりますがとても苦しいです。

でも、まずはそれを思い浮かべても苦しくならないくらいに、憧れと呼べるくらいに近づきたい。
もしそれが自分の中で叶ったとしたら、今度は、私はしげおかくんがすきだと胸を張って言えるくらいになりたい。

しかし私がこんなに遠く感じていても、しげおかくんはまださらなる高みを目指して進んでいる。
ということは、しげおかくんに近づくためにはしげおかくんよりもっとずっと早いペースで走らなければいけない。

きっとそれはとても苦しくて難しいけれど、いつか、しげおかくんの背中が目の前に見えるくらいになれますように。

いつか、胸を張ってあなたが好きだと言えますように。

あきと×大阪LOVER

華金のご多分に漏れず掛けられた、先輩からの飲みの誘いも振り切って、帰るのを遮るように終業ギリギリに入ってきた新しい資料も一心不乱に纏めて、ネオンと喧騒の中に向かう人たちとすれ違うように

「東京駅で。」

タクシーを走らせる。


急いだおかげで少し時間ができたから、おにぎりを一つとお茶だけ買って、新大阪行きの文字が小さく並ぶ新幹線に乗り込んだ。幸いそこまで混んでいなくてゆっくりと席に体を預ける。
携帯を開いて、

「最終に間に合ったよ 0時ちょい前にそっちに着くよ」

私の体より一足先に、右手から小さな望みを走らせる。
送ってから、やっぱり少し短すぎた?そっけないように見えないかな?と少し不安になりながら、おにぎりを口に運ぶ。
やっと叶った、たった2時間半の旅。
でも、そんな不安なんていらなかったようで。


いつもと同じ所に停まる彼の車を見つけて、一ヶ月ぶりの助手席に乗り込むと、お気に入りのTシャツとスウェット、サンダル。

あ、やっぱり。

分かってはいたけど、向かう先はいつもと同じ。
でもちょっとだけ、期待、してたんだけどな。


「ね、」

ちらりと右に目を向けても、運転している君の視線は前を向いたまま。

「そういえばさ、前に見に行ったじゃん、万博公園太陽の塔!久々に見たいなぁ…行かない?明日!」

「ん…そやなぁ…」

って言ってから君の口は動かない。
それはどっち?行くの?行かないの?
はっきり言ってや…。


もう数え切れないくらいここへ来ているし、数え切れないくらいあなたの言葉を隣で聞いている。
それなのに、あなたと同じになりたくて小さく口に出す大阪弁は、あなたのそれとは何かが違っていて、ぎこちない。
それにどこに行ったってあなたは「お前楽しそうやなぁ」と目尻を下げて言う。
でもあなた以外の前じゃこんなにはしゃいだりしないんだから。


…なんて、あなたは気付いてないと思うけど、もう喉の奥まで来ている言葉はたくさんあるよ。
でも、そこで引っかかって出てこない。
言えるわけないもの、そんなの。
出てきてしまえばもう二度と引っ込めることはできないし、すぐ頭を冷やしてごめんねって言える距離にはいつもあなたはいないから、けんかしてまた不安に月日を重ねるだなんて、絶対に嫌。


何度も通ったはずの、駅からあなたの家への道のりなのに、いつもより遅く時間が経っていくような、少しの沈黙。
まっすぐ伸びる御堂筋は今日も、いつもの夜と同じように、一車線しか動かないから、あなたの隣の席から見える景色はゆるゆると左を通り過ぎていく。
エンジン音ばかりが大きく聞こえる空間が息苦しくて、口を開く。

「ねぇ、家行く前にさ、何か飲み物買ってこうか?」

「ん…、そやなぁ…」

ほら、また。
いるの?いらないの?


コンビニの前に車を停めて、2人で自動ドアを通る。私は飲み物をカゴに入れて、あなたは店内をウロウロ。

「選んだん?」

「うん。」

「もう買うもんない?」

「うーん…大丈夫かな?」

「ん、じゃ行くで。」

私の持つカゴを覗き込み、持っていた期間限定のポテトチップを放り込むと、私の手からジュースとカゴの重みが消えた。

ほら、そういうところが。

会計をしてくれる彼の背中に、これからこうやって並んで夕飯の買い物するようになれる日は来るのかな、とふと思った。


もう数え切れないくらいここへ来ているし、数え切れないくらいあなたの隣を歩いている。それなのに、私はあなたと同じ部屋に入るのにただいまとは言えない。
そのことが、少し、いやもっと、私をひねくれ者にする。
口に出してしまいたい、もう喉から出掛かっている、たくさんの言葉。


あぁもう、こぼれる。


あなたはきっと私のことを考えてくれているんだと分かってる、信じてる。

でも。

将来大阪のオバチャンって呼ばれたい。

たとえお父さんやお母さんや、地元の友達と離れてしまっても、この街で暮らしたいの。

赤く輝く東京タワーだって、手をつないで見たあの少し塗装の落ちた銀色の通天閣にはかなわないんだよ?


勢いに任せたようにバラバラとこぼれ落ちた本音。
なのにあなたはまたそうやって。
なんで、なんでそんなに笑うの。
あんなの、プロポーズしたようなものじゃない!
もう、一度溢れてしまったものはとめどなくて。


何回来たって飽きずにまたこの街に来たくなってしまうのはあなたがいるからだし、
どこに行っても楽しいのもあなたがいるからだし、
どんなに喧嘩したって離れられないのはあなただからだもん。

全部あなたが隣にいるからなのに。

大好きなの、大切なの。

もう早く、こっちで住もうって言ってよ。


…あぁもう。言ってしまった。
怒られるかな。嫌われるかな。笑われるかな。
そんなごちゃごちゃした想いは、あなたの優しい笑顔に乗った言葉によって、消えた。




やっぱり、大阪は、憎らしいくらいに恋しい。と思った。




f:id:eightxjohnnist:20160117232358j:plain

リア充ヲタクになるためには~ジャニーズWEST編~

こんにちは、丹波です。

 昨日から一年間のヲタク用総支出が25000円だという「リア充ヲタク」なる言葉が、ジャニヲタ御用達某WSで取り上げられたことでTwitterのトレンド入りするくらいに各所で話題になっているようなのですが、こちらのeighterさんが実際どう切り詰めたらその25000円に収まるのかを試算されていらして、

muramuramurako.hatenablog.com

では我が軍の場合どんなもんなのかと気になって考えてみました。(私はジャニーズWESTの担当をしております。)

 

さぁやろう。

 

…あれ。まずどこからどこまで一年?今年度としたら去年の10月から今まで?いやなかなか中途半端。でも4月23日で区切ると、現場の嵐だった去年とNO現場だった今年の夏とじゃ支出だいぶ変わってくるし。ていうかまだデビューして一年半やん。

いいや、一年半分考えちゃえ☆

ということで、デビューから10月現在まで、地方在住遠征民の私がリア充ジャニヲタになるにはという前提で計算しましたので、東京大阪近辺にお住まい方を筆頭に多くの方に当てはまるものではないことを予めご了承いただきたいと思います。

 

 

(1)一年半の動き

2014年

4/23ええじゃないか発売

4/23ミスパDVDBD発売

4/26~5/6、5/6~5/21なにとも

5/28BAD BOYS J DVDBD発売

6/7~忍ジャニ公開

7/30SHARK DVDBD発売

8/2~9/28台風nDreamer

8/6 go WESTよーいドン発売

8/6仮面ティーチャーDVDBD発売

10/8ジパング発売

10/11近キョリ恋愛公開

11/12 SHARK 2nd DVDBD発売

12/3忍ジャニDVDBD発売

12/15写真集発売

12/17なにわ侍DVDBD発売

12/31カウコン

2015年

1/2~1/6一発めぇコン

1/10~1/31団五郎

1/28アゲインDVDBD発売

2/4ズンドコパラダイス発売

2/14~3/15ブラブラ

3/5カレンダー発売

4/8近キョリ恋愛DVDBD発売

4/22パリピポ発売

(ここまでで一年)

5/4~6/7パリピポツアー

6/3ごめ春DVDBD発売

6/17なにともDVDBD発売

7/29バリハピ発売

8/17~8/28MORSE振り込め

9/9ようこそ我が家へDVDBD発売

10/7一発めぇDVDBD発売

10/13~ツアー2016振り込め

 

 

(2)試算

今回、「一年で25000円」が条件であるため、(ⅰ)2014年4月23日~2015年4月22日の一年間と、(ⅱ)2015年4月23日~2015年10月23日の半年間に分けて計算しました。

でも何が助かるって、まだ公式ファンクラブが発足されていないため年会費4080円を差し引かないこと。(早く作っててほしいけど!!)

 

(ⅰ)2014年4月23日~2015年4月22日

デビューから一年間。まあ忙しい。まず手始めに出版物は全部買って、現場は一回ずつ観たらを仮定してみました。一応ね、一応。

CDは初回通常全、映像はBD初回、現場は関東圏一回で舞台とコンサートはそれぞれ手数料900円と750円としました。

合計20万9528円。

分かってはいたけどね?約10倍です。しかもこれ遠征費含んでません。遠征費をヤコバ使用として片道3000円で足したものがこちらです。

23万9528円。

え、これ10分の1とか無理じゃない?でもリア充になるために頑張って削ります。

 

まず3つにパターン分けしてみました。

①折角なら生で見たい!現場重視型

②1stコンサートだけは行きたい!間引き型

③現場は諦め!茶の間型

・①の場合

現場重視ということで、なにともには行きます。大阪7500円、東京8500円だけど、住んでる地域的に東京の方が遠征費足したら安くなるので東京へ。

あとはい一発めぇコン。とっても個人的理由ですが、私実家が関東なので、帰省しているお正月なら交通費往復で3600円で済む!ということもあるのでぜひ行きたいところ。

8500+900+6000+6200+750+3600=25950円

超えてしまった。でも台風nとブラブラはしげおかくんいないし…団五郎の方がなにともより高いし…。これが一番妥当な選択かなぁと。

薄々気付いてはいましたが、年間25000円で遠征2回は無理です。

 

・②の場合

照史の言葉を借りれば「1stは一回しかねぇぞ!」ってことですし、上と同じようにお正月につき遠征の必要なしということにもあやかって、一発めぇには行きたいと思います。せっかくのコンサートですし、ペンラと団扇を買いましょう!

CD全部は買えないので、アルバムなら曲数も多いし、go WEST よーいドン!とパリピポの通常盤は買いたい。

6200+750+3600+1500+600+3240+2160=24926円

なんとか収まった。でもシングルのカップリングとかは網羅できません。まぁしょうがない、コンサートは本能で楽しめる。

 

・③の場合

徹底的に茶の間。現場には行きません。でもそんなに余裕はないのでやっぱりCDは通常盤です。ええじゃないか、ジパング、ズンドコ、go WEST よーいドン!、パリピポ一枚ずつ。写真集とカレンダーも買います。

あ、リア充ということですから、映画にも行きたいですね、忍ジャニは友達と、近キョリは恋人と(遠い目)。ファーストデーとかに行けば1100円で観られるよ!ってことでちょっと節約。

残りはドル誌かな。一冊660円として7冊買えます。2ヶ月に一冊。厳選して買いましょう。

1080+1080+1080+3240+2160+2376+2300+660×7=24888円

収まりました。これなら大体主要な出版物は網羅できる。雑誌減らしてCDを初回盤にするもよし。現場はいつか映像化することを祈りましょう。

 

(ⅱ)2015年4月23日~2015年10月23日

デビュー2年目突入。だいぶ動きが落ち着いてきたので、(ⅰ)ほどパターンは作れませんでした。

④やっぱり行きたい!現場型

⑤浮気もしないよ!茶の間型

の2つです。

・④の場合

やっぱり現場の楽しさを知りたい、忘れられない、ということでパリピポツアーに行きたい。でも合計したら

6700+750+6000=13450円。

まぁ超えますよね。分かってました。これから後半で取り返せるかな?って思いましたが、年明けツアーの振り込めが10/13から始まってしまう。現場担になるのはやっぱり無理がある。

 

・⑤の場合

パリピポは諦めたし、今年の夏は現場もないし、浮気したらじゅんたくんに素焼きにされるし、大人しく茶の間に居座ろうと思います。バリハピの通常盤と、なにともと一発めぇのDVD通常盤があれば曲も分かるし現場にだって行った気になれるよ!あと残りでドル誌を厳選に厳選を重ねて一冊買ってみます。

1080+4428+5832+660=12000円

ほら、500円も余裕ある。11月以降にちょっと12500円を超えても問題ない。雑誌諦めればぶるれい画質の我が軍を毎日だって拝めます。神か。

 

 

(3)まとめ

まとめと言えるほどまとまった文章は書けないし、今までの文で大体分かることですが、25000円に収めるためには、

・遠征の場合、現場は一年一回一公演まで

・ドル誌はどうしても気に入ったものだけ

・CD,DVDは複数買いしない

・ドラマや映画はBOX買わない

なんかが最低条件になるようです。

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ。

 

 

 

 

一年間で25000円なんて無理。

 

しばらく「リア充ヲタク」になるのはやめておきます。

 

じゅんたくん×飲みに来ないか

f:id:eightxjohnnist:20150701222204j:plain



「飲みに来ぇへん?」
久々に、君を家に呼んで、2人で、酌を交わして、話でもしようかと、思っていた、はず、だった。のに。
なんで俺は、1人で、2つの、汗をかいたグラスを目の前に座ってるんやろ。
なんやねん、あいつ。




君とのメールのやりとりの最後の、俺の誘いに対する、君からの
「これから行くね」
の一行をまた見つめる。
今日も俺は、また、1人で、グラスを片手に10日も前のそんなことを考えている。
俺も、君も、似たもの同士、思ったことは言ってしまうし、気が強いし、負けず嫌い。
最初はなんの話からあんなになってもうたんやっけ、思い出せないくらい些細なこと。でも少しずつ寂しかったこととか、我慢してたこととか、言いたいことがぶつかって、2人揃って止める方法が分からなくなった。


君の言葉の節々にいつもトゲがあるから
逆撫でされて気に入らなくて、ついカッとなってしまう。


だめだとは頭で分かっていても、君を小馬鹿にするような言葉や、自分を正当化するような言い訳は、とめどなく溢れて。
溢れた言葉の波は、君を飲み込んで、濁流になって、俺の部屋から追いやった。
このまま放っておいて、俺と君の性格で、いつの間にか元通り、なんてことになる訳ないことは分かってる。
君が、俺から連絡が来るのを待ってることも。
だっていつも君より先に俺が折れるから。
でも。


ごめんねとすぐに切り出して、飲みに来ないかって誘いたいけど、先に引きさがんのもシャクだな。それじゃまさに君の思い通りだ。

そういえば、この前楽屋に置いてあった雑誌。いつもそんなの流すようにパラパラとめくってしまう占いのページに、ふと目が止まった。俺の乙女座と、君の星座はなんやっけ…、あ。
「相性32%」
フォントも、色合いも暗くて、これがいい数字じゃないことは一目で理解できるものやった。
こんなん当てにならんわ、と思ったつもりやったのに。
また思い出すとか、思ってたより引きずってるやん、自分。
ダサ。
あんな馬鹿にしたけど、君は可愛くて、スタイルもよくて、頭が良い、自慢の彼女だってことは俺が一番知ってる。
だからこそ、分かってる。君を野放しにしておいて、そこらの男が放っておく訳がないことも。
手遅れになる前に、取り戻しに行かな。
何て言おう?なんて送ればええ?それとも口で伝えようか?
我慢比べならもうええやろ?十分や。朝まで2人で飲み明かしてあんなつまらない言い争いなんて忘れへんか?
言わなきゃならないことはたくさんある。
あれ…。
ふと頭をよぎる。
もしかして、君から連絡してこないのは。


まさかすでにどっかの輩と…そんなバカな 僕の思い過ごしさ…

君より先に謝らないなんていう、くだらないプライドなんかより、もっとずっと大切なのがあるやろと、頭の中で自分が自分に言い聞かせている。
君が隣にいなければ、2つのグラスが並ばなければ。
左手の少し汗ばんできたグラスの中のアルコールを、口に含んではみたものの、美味しかったからとまた買ってきたはずなのに、この前君と一緒に飲んだ時より、ずっと、味気なかった。


氷は溶け、強いアルコールを少しずつ薄めながら、揺れて、グラスの側面にカランと小さく音を立てて触れる。
音の方を一瞥すると、その先で淡く透明にゆらめく輝き。
左手を時計回りにくるりと傾け、淡い輝きの波を、ぐんと喉の奥に流し込んだ。
右手に光るディスプレイには君の名前。
うん、よし。


ごめんねとすぐに謝るのだ!君の文句だってとことん飲むぞ!
ここで引きさがんのが本当の男らしさ 僕の思う勝利だ
で、また僕は君の思い通りだ


明日は、君の好きなおつまみを沢山買ってこよう。
いくら飲んでもええように。